貧血の鍼灸治療について

こんにちは、今回は「貧血」の鍼灸治療についてお話させて頂きます。

貧血とは医学的には「赤血球の不足」を表します。
血液の働きで最も重要な仕事は、酸素を肺から体の各組織へと運び、肺に二酸化炭素
を戻すことですが、この働きを主るのは赤血球にある血色素・ヘモグロビンです。
血液が酸素を運搬する能力は、ヘモグロビンの量とほぼ比例するとされています。

貧血に共通する「一般症状」としては、頭痛、動悸・息切れ、耳鳴り、めまい、
立ちくらみ、疲れやすい、顔色が悪い、食欲がない、人一倍寒さを感じるなど、
様々な症状が起こりますが、穏やかに進行すると自覚症状を伴わないこともあります。

 

  

貧血の種類としては
鉄欠乏性貧血:
鉄分が不足してヘモグロビンの形成が困難になることでおこり、貧血全体の60~80%を
占めており、上記の一般症状の他に、口腔粘膜や眼瞼結膜が白っぽくなったりします。
症状が強くなると、抜け毛や枝毛が増えたり、爪が弱くなって反り返るスプーンネイル
や食物などを飲み込みにくくなることがあります。

再生不良性貧血:
骨髄の機能が低下して血球のもとになる細胞に障害が起こり、赤血球や白血球、血小板の
生成がうまくいかなくなるものです。一般症状に加えて、鼻や歯茎から出血しやすくなったり、
出血がなかなか止まらなかったり、痣ができやすくなったりします。
重症の場合は輸血が必要で、骨髄移植が行われることもあります。

悪性貧血(巨赤芽球貧血):
赤血球が作られるときに必要なビタミンB12、葉酸が不足して赤血球が減少するために
おこる貧血です。ビタミンB12の欠乏は、胃の切除や小腸の病気、生まれつきこれらの栄養素
を吸収できなかったりすることが原因で起こります。
葉酸の欠乏は、妊娠中は胎児の脳や脊髄などを成長させるために、葉酸が多く消費される
ために妊婦に起こりやすいと言われています。
その他極端な偏食や、大酒飲みの人にみられるとされています。

溶血性貧血:
赤血球の寿命は約120日で、その後は肝臓や脾臓で破壊されています。通常は破壊される
一方で新たに骨髄で作られるため、赤血球が不足することはありませんが、壊れるまでの
時間が早くなり、赤血球を補うことができなくなると貧血になります。
本症では、一般症状の他に皮膚や粘膜が黄色くなる「黄疸」がみられるのが特徴です。
原因としては先天性のものや後天性のものなど、多くの原因があるため、それぞれに応じた
治療を行う必要があります。

 

鉄欠乏性貧血は、食事療法が有効な治療手段となっていますが、食品に含まれる鉄分
には、吸収率の良い「ヘム鉄」と、あまり良くない「非ヘム鉄」があります。

ヘム鉄はレバー、豚・牛のもも肉、カツオ、マグロ、牡蠣、アサリ、ひじきなどに
非ヘム鉄は小松菜、ホウレン草、納豆、木綿豆腐、プルーン、レーズン、胡桃などに
多く含まれています。非ヘム鉄は体内で吸収されにくいため、タンパク質やビタミンCと
一緒に摂ると良いとされいます。

またコーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶に含まれる「タンニン」は鉄の吸収を妨げる
ため、貧血気味のときはなるべく避けるのが良いようです。

貧血は食生活を見直すことで予防できますが、すでに貧血の症状が重い場合は、
食生活の見直しだけでは改善が難しいこともあるため、病院の受診も必要になって
きます。血液検査によって鉄欠乏性貧血と診断されると「鉄剤」が処方されます。
鉄剤を飲み始めると貧血の症状は急速に良くなりますが、完治には数か月かかります。

 

東洋医学では「脾は水穀の精微から直接血を生成するほか、営気と津液を合成
して血を生成」すると考えています。
水穀(すいこく)の精微(せいび)とは飲食物から得られる栄養素のこと。
営気(えいき)とは、脾が獲得した水穀の精微の中の栄養豊富な部分から生成
され、血とともに全身に運ばれ栄養作用を発揮する気とされています。
津液(しんえき)とは、人体中の正常な水液の総称で、唾液・胃液・汗・涙など
も含まれます。

血の生成には脾の他に心、肝、腎も係わっていると考えられていますので、
鍼灸治療では、脾・心・肝・腎のツボが使われます。

定期的に鍼灸治療院で治療を受けながら、ご自宅でもせんねん灸や棒灸などを
使ってセルフケアを行っていくと良いでしょう。

食欲不振、胃もたれ、浮腫みなどがあれば足三里、
めまい、耳鳴りには太谿(たいけい)を、寒気であれば腎兪にお灸をすると
良いでしょう。
足三里:座った状態で膝を立て、膝のお皿の外側の窪みから指四本下のところ。
太谿:内くるぶしとアキレス腱の中間で、押さえると窪みのあるところ。
腎兪:おヘソと同じ高さの背骨を探り、そこから左右に指二本分ひらいたところ。

このあたりで反応のあるところにツボを取ります。
せんねん灸であれば、熱が通るまで2壮、3壮と据えていきます。1壮目でも熱く
感じたら途中で取って下さい。くれぐれも火傷をしないようにして下さい。

当院ではセルフケアのために、安全で効果的なお灸の据えかたのご指導をして
おります。お気軽にお問合せ下さい。

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